2006,07,30, Sunday
『暴圧(大虐殺)』(1960年・S35)
大正12年9月1日。アナキスト・古川大次郎(天知茂:前髪下ろした書生風)が牛メシ屋で関東大震災に遭遇していた頃、「朝鮮人たちが放火しているぞ!」と根も葉もないデマが飛び交い、何の罪も無い朝鮮人たちが暴徒と化した群集に襲われていた。それに乗じた軍部は、朝鮮人や社会主義者を一斉に拘束、殺害するという計画を実行。仲間とアジトにいるところをどうやらひとりだけ捕縛された古川は、女子供まで容赦なく銃殺する軍部の非道を目の当たりにして怒りに震えた(自分は川に飛び込んでうまく逃れたが ←さすがの逃げ足)。 さらに古川たち同志の師である左翼の柱・大杉(細川俊夫)が妻や幼い息子ともども軍に拉致され、甘粕大尉(沼田曜一)らの手により抹殺される。古川は打倒・軍部を誓い、同郷の先輩・高松やその妹・京子(古川とほんのり恋仲)の心配をよそに過激テロに走ろうとする。まずは資金繰りをと、大阪の知人を訪ねた際に外回りの中年銀行員を刃物で脅すが、カバンを掴んで離さないので(当然だ)うっかり殺してしまう。東京に戻り仲間と缶詰爆弾を作って軍の幹部暗殺を謀るが胡散臭い挙動でバレて失敗。軍の追及を避け、半ば不貞腐れてカフェの女給さんとはじめての一夜を過ごしたところ、彼女の父は自分が手にかけた銀行員だと判明。ショックで飛び出し、海辺で眉根を寄せていると、高松と京子に遭遇。古川を救いたい一心の京子は彼の居場所を警察にチクってしまい・・・と、進めば進むほど踏んだり蹴ったり。 それでも懲りずに巨頭会議が開かれる陸軍省に忍び込み、部屋の爆破を目論んだ古川たちだったが、張り巡らせたコードを踏まれた拍子に導火線が外れてしまい、あえなく御用に。「朝鮮人や日本人の同胞を虐殺した奴らはどうして処罰されないんだ! こんな不合理が許されていいのか! 俺達こそ民衆のために戦っているのがわからないのか!」などと叫びながら、古川は護送車に消えていった。 実在の人物・事件を題材にしたセミ・ドキュメンタリーなので、主人公の行動に対してとやかく言うことは控えたいが、なんにせよテロはいかんと思うなあ。 *もっとも、怒涛の不幸(不運)の連続に見舞われる天っちゃんを観ていると、本人と話の展開はすこぶるシリアスなのについ顔が綻んでしまうのだが(不合理が似合いすぎてて) *大杉の通夜の際、「おとうちゃん、おかあちゃん、どうして死んじゃったの。ああんああん」と泣きじゃくる幼い娘・エマちゃんを抱っこして庭先に出た古川、「おじさんと歌をうたおうね」と『月の砂漠』を披露。♪金と~銀との~♪からは彼女とハモるのだが、天っちゃんが低く出すぎてエマちゃんが大変そうだった *眼鏡で変装とか、仮面をつけてバイオリンを弾くとか、本筋とは関係ないところで楽しめる作品でもある(女給さんとの夜のシーンも必要以上に可憐だ←天っちゃんが)
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| 映画::新東宝 | 01:52 PM | comments (x) | trackback (x) | |