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怒号する巨弾
『怒号する巨弾』(1960年・S35)

怒号する巨弾


第二次大戦中、天田公一(天知茂)は父と共にスパイの濡れ衣を着せられ投獄、拷問の末、父は獄中で死亡した。17年後、宮本公平と名を変え、古美術商を営む公一は自分たち親子を陥れた者たちに復讐を始める。手下を使い、巧妙かつ冷酷に3人を抹殺してゆく公一。彼の最後の標的は、当時の取調べ担当刑事で今は警視総監に登りつめた志賀。だが公一は、復讐のために近づいたはずの志賀の娘・洋子(三ツ矢歌子)を本気で愛してしまい・・・。

実にドラマチックな筋書きに沿って、翳のある謎の青年をこれまたドラマチックに体現する天っちゃんがハマリ役。洋子さんと熱い抱擁を交わしているときでさえ遠くを彷徨っている暗い目つきがいい。射撃場で知り合ったライバル、敏腕警部・宇野(宇津井健)も戦争で家族全員を亡くしたという設定だが、良くも悪くも一本気なキャラの宇津井氏と、屈折を絵にかいたような彼とでは、こういう場合は勝負にならない。おまけに宇野警部、警視総監の覚えはめでたいものの、娘の洋子さんに思いっきり嫌われてるもんだからかなり分が悪い。宇野が勝っていたのは身長と前髪の多さくらいか(暴言)

正体が暴かれ追い詰められた公一は、宇野に一対一の勝負(=銃を手にして車で決闘)を挑む。名残惜しそうに公一を見つめながら、彼のレザージャケット(背広は相変わらずぶかぶかだがこういうのは良く似合う)の胸ポケットに花を一輪そっと挿す洋子さん。犯罪者だと知り、さらに誘拐(&殺害?)目的なのを知りながら公一に付いて来た彼女もまた、彼のために人を殺めてしまえるほどに彼を愛していた。これからいつもの逃避行モードに入ってもおかしくないシチュエーションだったが、愛を得て満足したのか、車から洋子さんを降ろし、ライフルにわざと弾を込めずに宇野(の車)と向き合う公一。

1回目、勝負つかず。下手だな宇野!(←あ、わざとでしたか)。そして2回目、宇野の拳銃が公一のライフルを弾き飛ばした。ハッと色を失くす洋子さん、宇野のことなんかまるでアウトオブ眼中。なんだ止めをさしてくれるんじゃないのかと心で突っ込みながら(想像)、公一は拳銃を取り出してこめかみに当てた。空に響く銃声。自らの手ですべてを終わらせた公一の死に顔は、どこか幸せそうだった(あんまり端整なのでしばし見惚れてしまった)。

追記: goo映画のあらすじにはまた少しばかり騙された(公一は宇野のヘタレな拳銃に倒れるほどヤワじゃない。それに17年前、幼くなかったし←ちょっとムリめの「地獄」の大学生風)

追記その2:足元だけを映す手法や音楽がなんとなく「第三の男」っぽかった(遊園地シーンもある)。

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| 映画::新東宝 | 01:37 PM | comments (x) | trackback (x) |
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