密会(1968年・S43・10月3日〜翌3月27日OA・全26回)CX 21:00-21:30
「週刊TVガイド」(1968年・S43年・12月6日・328号)から引用(資料提供:naveraさま)
奥様が好きな「密会」の魅力
ヨロメキと日陰の愛と自由恋愛と…「密会」がくり広げる“大人”の恋模様
夫以外の男に愛情を抱きはじめる妻、妻ある男との“隠れた愛人”としてひたすら生きようとする古風な女性、愛する男と結婚せずに“自由恋愛”を続ける現代的なハイ・ミス――こんな、三者三様の愛に生きる、現代女性の一断面をみせているのが「密会」(フジ・関西・東海テレビ)だ。いわば、大人の愛情物語というわけだが、もし、あなたが、この立場になったら、どうしますか?
千沙子と拝島を早く結ばせて……
第8回(11月21日放送)までの3人をめぐる大ザッパな物語は別項(*下にあり)のをごらんいただきたい。来年3月末まで3人の愛情はどう進展するのか興味がもたれるところだが、早くも「拝島(天知茂)と千沙子(新珠三千代)はどうなるの?」といった質問めいた内容や、千沙子に同情する投書が担当者の机に舞い込んでいる。
「……千沙子と拝島は早く結ばせた方がいいと思います。男なんて勝手すぎます。いい奥さんがいながら、外に別の女をつくるなんて絶対許せないことです。夫に裏切られた千沙子は当然、好きになる拝島と結ばれた方が女性として幸せになるのではないでしょうか……」
と、自分の体験をまじえて千沙子を“激励”している四十歳代の主婦。
同じ年代でありながらも逆に千沙子に自重と反省を求めるものもある。
「……男の浮気は本質的なもので、妻たるもの、そんなことで心をぐらつかせてはいけません。デンと妻の座にすわって、愛する夫のために身も心も尽くしてやらなければ……。加納だって決して悪い男じゃないと思います。千沙子は余りにも家庭的に冷たく、お嬢さんすぎるため、それにあきたらない加納が志津子の許に走ったのではないでしょうか……」といった具合。
片や新珠ファンで、一方は菅原ファンらしいが、それにしても妻の心の傾斜に賛成したり、夫の行為に味方?したり、対照的な投書があるのは、女心の微妙さを表しているといえよう。
「それがネライなんですよ。2人がどうなるか、ハラハラしながら見てくださるファンが多いことを願っているんです」
と、“ヨロメキ太郎”の異名をとる、岡田ディレクターは予想通りの反響にニヤニヤしている。
面白いことには、志津子への同情が1、2あることだ。
「二号さんというのは決していい役ではないが、志津子は大変やさしく、女らしい面がいろいろある。妻千沙子にないところを備えているし、加納が志津子にホレるのもむりではないんじゃないかな……」
とは、中年の男性の投書だ。
確かに、献身的に尽くす女性は、男が好むタイプといえそうで、女性からの支持の投書も1通ある。
「日陰の“愛”に生きる志津子の心はつつましいものではないでしょうか」
――旦那のいる女性らしい。
現代的感覚をもつ玲子の愛の生き方については、やはり若い層に“理解”されている。
「なかなか勇気があって、かわいいわ。好きな人とデートすれば、そういう関係になるの当然だと思うの。その上、互いに自由な身なんですもの、私も玲子のように、女一人で生活できる立場にあれば、“自由恋愛”してみたいわ」
と、望んでいるのは都内のあるバーにアルバイトしている21歳のOLの感覚。
こうみると、三人三様の愛情の持ち方に、それぞれ共鳴者はいるのである。
新珠は弁護、河村はついていけない
では、こうしたヒロインを演じている女優陣に、もし、ドラマと同じ立場になったら……を語ってもらおう。
新珠三千代は「もしも」なんて考えたことがなく、芝居として考える方ですが……と前おきしながら、
「千沙子は大変つらいと思うんです。自分の気持ちを信じて、その気持ちについてゆくことができるかどうか、ともかく自分の信じた通りに行動することじゃないかしら」
さらに、
「心の空白をもつ千沙子が、機会あっておいしいものを食べ、おしゃべりする気持ちはわかるわ。ウチの中で夫に当たり散らし、髪の毛を逆立てるなんてのは長屋のカミさんがやることで、知性のある千沙子にできないわけだわ。ウサ晴らしに外に出て、アバンチュールを楽しみたいのもわかるような気がします」
と、全面的に千沙子の行動を弁護する。
日陰者の女として生きる役を演じている河村有紀は、お若いだけに、この役の人物にはとってもついてゆけないという。
「役としてはすごく楽しく打ち込んでいますが、とてもいやだわ。私って欲ばりだから、愛する男性は自分だけのものにしておきたい」
広瀬みさからは話がきけなかったが、3人をめぐる男・天知茂の代弁として純代夫人に語ってもらうと、
「女性は悲しいですよ。3人とも自分がこういう愛情じゃいけないな、と思うことがあると思うのですよ。こうした方がいいと思ってどうすることもできないのじゃないかしら。だから女は共通して悲しいと思うんです」
志津子については、加納とのことが千沙子に知られて、これまで控え目だったのが、がぜん“本妻には負けられない”といった意識が芽生え、開き直ったような場面もでてくるため「ズブトサがある」(純代夫人)「何もない立場はかえって強いことがいえる」(新珠)ようになると見ている。
また、現代的な玲子の生き方については、一見、縛られないで行動して現代風と見うけられ勝ちだが、1人の男しか愛することができず、段々とそのトリコになって、動きがとれなくなってゆくように物語は展開するようで「このドラマの中では昔からある一番古風な女になるんじゃないかしら」と、新珠も、純代夫人も一致した見方をしている。
最後にこのドラマの育ての親岡田ディレクターにしめくくってもらおう。「3人の女性の愛情それ自体はそれぞれの立場でかわいいと思うんです。愛情のもち方は、めぐり合う男によってさまざまだし、多角的であっていいと思います。これがいい、これが悪いと方程式のようにはピッタリいかないのが女の愛情なのではないでしょうか」
【写真キャプション(天っちゃん関連のものだけ)】
・男性的な拝島(天知茂)に千沙子(新珠三千代)の胸はあやしくふるえる (煙草をくわえてあさってを向いている拝島の背後であやしくふるえているらしい千沙子さんと友人)
・自由恋愛を実践する玲子(広瀬みさ)と拝島(天知茂) (スーツ姿・後ろ向きの拝島の肩に頬をよせている玲子さん)
☆登場人物とこれまでのあらすじ☆
このドラマをご存じない方のためにヒロイン3人の横顔を、あらすじもまじえながら紹介しておこう。
●加納千沙子(新珠三千代)
政界の黒幕・大曽根正道(三津田健)のひとり娘で、新日本建設KKの若手重役・加納信行(菅原謙次)と結婚、恵まれた環境にあるが、子どもはいない。知性と教養、才気にあふれた美貌の持ち主で、お似合いの和服姿がとても魅力的だ。
苦労知らずのお嬢さん妻なので、夫の行動などはあまり関心も持っていなかったが、ふとしたことから大阪出張でいないはずの夫の声を東京の電話で聞いてびっくり。疑ってもみなかった夫の行動に疑問を持ち始める。
そして、その裏には、ある土地の売買をめぐって、夫が千沙子の実父である大曽根正道との秘密のつながりがあることを知るようになる。
夫への疑いをもったまま同窓会などに出席してみるが、親友の桜井洋子たちから夫の浮気話などを聞かされ、人事ではなくなったと思う……が、嫉妬の感情はない。ここらは、やはり知性的なのだが、過去10年の夫婦生活をかえりみると、夫に情熱を感じていない自分に気づき、そんな新鮮な驚きにひたる。
外出に気をまぎらわす千沙子。たまたま、外人演奏家のチャリティ・コンサートに出かけるが、劇場前で切符をなくしたことに気がつく。困惑してバッグを探る千沙子に、1人の男が切符を差し出す。
これが、男性的魅力に富んだ38歳の若手実業家で、運命の男となる拝島司郎(天知茂)である。感謝しながらも、一瞬警戒の瞳を現わす千沙子に微笑を投げ「あなたの隣に掛けようとは思ってはいません」と、無造作に自分の切符を破って去る拝島の後姿が千沙子の胸に強い印象を残す。
そしてある日、千沙子の許へ娘時代から出入りの貴金属商・天宝堂の支配人が指輪の修理ができたと、見知らぬ指輪を届けてくれた。きけば妻の誕生日の贈り物だといって、夫が4年前に買ったものだという。千沙子は4年間、自分に隠れて夫に尽くした女を想像する。そして、宝石店へ自分の目には通らなかったことにして夫に戻すよう頼む。
問題の指輪が、美しいしとやかな女性の指に光っているのを見たのは、ある高級レストランだった。現実に夫の愛人を見た千沙子、心はやはり動揺した。夫に合わずその場を去った千沙子は、偶然、拝島と再会、空白な心の中に一歩深く拝島の印象は食い込んでゆく……。
●宮地志津子(河村有紀)
30歳くらい。加納信行の隠された愛人で東京・青山に妾宅を持ち、何不自由なく過ごしている。陽の当たらぬ場所を承知しながらわがままな加納に純愛の限りを尽くし、食事の買い物にもいそいそと出かけ、千沙子以上にかいがいしく身のまわりを世話している。加納がいなくては1日も生きていけない、といった古い型の女だ。
加納との4年間のこうした関係も、千沙子にうすうすと分かり始めて、志津子は不安がつのる。自分の存在が知れると同時に、手を切らされるのではないかという恐れがあったのだ。が、自分の指に優しく指輪をはめてくれる加納の態度に、志津子は「たとえ、あなたに妻があろうと地位があろうと、そんなことは無視して今の一瞬一瞬の愛を生きよう」と思う。問題の指輪であることを知らずに……。
●夏目玲子(広瀬みさ)
25歳くらい。貿易会社の社長秘書。近代的な美貌と才気のあるハイ・ミス。これまた3年間も拝島の愛人である。
会いたい時に会う、といったきまりで、お互いを束縛しない“自由恋愛”を実践、週1、2回、拝島とデートする。しかし、玲子は拝島を熱烈に愛している。
楽しみにしていたチャリティー・コンサートが聞けないなんて……と、一本気に怒る玲子を拝島は改めていとしく思うし、玲子も拝島の胸に抱かれれば、弱い女となってしまう。
絵が好きで、拝島と会えぬ日は好きな油絵描きに当たっている。ある日、鎌倉の寺で絵を描いているとき、北鎌倉に居を構える父親・大曽根正道に離婚話を持ち込んで一笑に付されてすごすご帰る千沙子が声をかける。
ふと行きずりに会った女同士。互いの環境は教えずに、女同士の話に興ずる。千沙子は情熱を持って1人の男(=拝島)を愛している玲子を羨ましいと思う。
この2人は、やがて1人の男性(=拝島)をはさんで愛の対決をすることになろうなどとは夢にも思わず、おたがいにひかれ合う……。
*この号の
表紙も飾っているヨロメキ・ドラマ「密会」の全容。天っちゃんの言葉はないが、さりげなく奥様が登場して話をまとめているのが面白い。で、結局どうなったんだろうこの先。
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TVドラマ(現代劇)::その他(シリーズ) | 10:59 PM | comments (x) | trackback (x) |