2007,07,22, Sunday
『主水之介三番勝負』(1965年・S40)
紀州家指南役の座を巡り、亡き義父の親友で天地自念流の片倉一閑斎(内田朝雄)と競うことになった鏡心流大塚道場の若先生・大塚玄蕃(天知茂)。技術不足を謀略(と金)でカバーして今の地位を築いてきた彼は、腕がすこぶる立つがちょっと問題児の元師範代・木島弥十郎(近衛十四郎)と仲間達に一閑斎殺害を依頼。目論見どおり一閑斎を再起不能にすることに成功するが、夢殿主水之介(主役:大川橋蔵)という自分には無い剣の腕前とライトな性格を纏った小憎らしい男が帰ってきたせいで歯車が狂い始める。 主水之介はライバル・片倉道場のかつての精鋭で、玄蕃の妻・美緒(桜町弘子)の元恋人。3年前、流派の違いもなんのその、人目をはばからずイチャイチャする相思相愛の関係だったのを、同じく“お嬢さん”に惚れ抜いていた玄蕃が姦計を巡らせて仲を引き裂き、破門に追いやった男だった。案の定、愛しい恋人の帰還を知り、お揃いの鈴をチリリンと身につけて浮き足立つ美緒に玄蕃は激しくジェラシー。おまけに一閑斎事件の真相を聞きつけた美緒は彼を思いっきり毛嫌いし始め、肌すら合わせてくれない。 進退窮まった玄蕃は主水之介をも抹殺してしまおうと計画するのだが、生粋の剣オタクである弥十郎は「あいつと勝負するのはオレだ、それまでは誰にも触れさせん!」と子分達をぶった切る始末で、仕方なく意地とプライドを賭けて御前試合で主水之介と対戦する羽目に。だが爽やかな主演オーラを放つ主水之介に勝てるはずもなく、玄蕃は破れた。弱り目に祟り目といおうか、怪我を負い伏せっているところへ弥十郎がやってきて造反、お前の役目はもう終わった、道場の3代目はこのワシだ、ついでに美緒も貰ってやるから安心しろハッハッハとぶったためにカッときて刀を握った瞬間、障子ごとばさーっとやられて一巻の終わり。享年32歳(←墓石による)、無器用な愛に生き、愛ゆえに死に急いだ脆い男であった。 *この種のヤな男、新東宝時代ならものすごく憎らしげに演じてくれたはずなのだが、ここではイヤミぶりよりも一人の女に尽くしまくる(でも報われない)哀しい一途さが印象的で、色気たっぷりのルックスの良さも手伝って思わず同情したくなる場面がちらほら。 *また美緒さんが、初恋を大事にする純情な乙女、というよりは家や体裁を気にする下心が見え隠れする女性なので余計に玄蕃が哀れだった。最期も「どこにも行かないでくれ・・・!」と美緒に縋って例の鈴を手にしたところで弥十郎襲来、そのまま鈴を握って事切れたのだが、ラストではなぜかお互いの鈴を交換しているいちゃいちゃカップル。美緒さん、せめて鈴くらい握らせたまま葬ってあげなよ!
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| 映画::東映 | 12:56 PM | comments (x) | trackback (x) | |