2006,07,09, Sunday
『賞金首 一瞬八人斬り』(1972年・S47)
消えた幕府の御用金を狙う浪人、と見せかけて実は尾張藩の隠し目付の頭領・薊(=あざみ)弥十郎(天知茂)。メキシコあたりの剛毅な用心棒に見えなくもない主人公(実は医者)・錣(=しころ)市兵衛(若山富三郎)とは出会ったときから張り合っていて、色々対照的な二人の言動も面白い(ホット vs クール、でっかい vs ちっちゃいとか←おい)『六死美人』から16年、おおきくなったものだ。 この弥十郎さん、颯爽と馬で登場するなり、お尋ね者の首をトマホーク片手投げでチョッキンして周囲をびびらせる。金の在り処を知る男・夜叉狼の妹だというので狙われた娘・飛び天童(←兄も兄なら妹も妹な名前)をさりげなく救ってやり、市兵衛さんが彼女の兄貴を牢から連れ出したのをちゃっかり横取りしようと計画するも、失敗すると平気で撃ち殺したり(しかも妹に「アイツ(=市兵衛)は血も涙もない奴だ、お前の兄貴を殺しちまったぜ」とか言っちゃうんだなこれが。そりゃアンタだよ!)、挙句には今まで連れ立っていた飛び天童を荒くれ男の渦に投げ込み、その悲鳴を耳にしても顔色一つ変えなかったり、悪人メイクをしているわけではないのに心底得たいの知れない悪人に見えてしまう、まさに「色悪(いろあく)」の権化。善人も悪人も当たり前のようにこなしていて、観ている方もそんな彼に違和感がないというのは凄いことだなあと思う(そりゃ善人のときでも「わあ怖い顔だよ天っちゃん」とは突っ込んでいるけど) ただ、アダルト一般の扱いはすこぶる悪い彼だが、子供に対してはほんの少しだけ情が動く(というか地が出る?)とみえて、子供の命と引き換えに金持って来い!などと非情なことを口走りつつ、相手が必ず来ることを見越して言ってるし、「ガキの命など、どうでもいい」といいながら子供をなんとなく優しく下ろしてあげてるあたりも見どころのひとつだ。 なんだかんだ言っても日食時にばっさりやられちゃう弥十郎(だって若山トミーさんってば、あの体躯でトンボ切るんだもんな!)だが、彼が一番のワルではなかったことが後から判明、東映らしい不条理な世界が繰り広げられてエンドマークと相成った。(何も子供まで殺さなくてもいいじゃないか>内藤武敏) *この作品を最後に、天っちゃんはしばらく映画から遠ざかる(次の出演作は1979年の『白昼の死角』)。たぶんテレビが忙しくなったんだろう。
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| 映画::東映 | 12:03 AM | comments (x) | trackback (x) | |