2009,04,30, Thursday
#5「兇悪の華」(1973年・S48・5月3日OA)
タレ込み情報を元に、小学校から給料600万を奪って逃げた三上(河合絃司)を追う橘警部(渡辺文雄)。三上を尾けてマンションの一室に消える彼、直後の銃声。駆け付けた一課の部下たちは、撃たれて床に横たわる三上を見た。だが600万入りの紙包みが消えている。「こいつが…隠した…」瀕死の三上が指さした人物は、なんと橘だった――。 正当防衛は認められたものの、600万が忽然と消え失せたまま1週間が過ぎ、内外の疑いの目は橘に集中する。捜査から外れろとばかりに一課長・斎藤(岡田英次)から休暇を勧められ、失意の内に帰宅すると家の中は荒らされ放題の上「金返してもらいてぇんだよ!」と男の声で脅迫電話が。肝臓を患い入院中の妻・洋子(谷口香)のもとへ慌てて駆け付けると、今度は女の声で地獄へ引きずり込んでやると穏やかならざる電話が掛かってきた。 捜査権を一課から引き継いだ特捜部は橘をマーク。政治家(=民由党幹事長)の娘である妻を一部屋2万円の病室に入れて朝晩足繁く見舞う彼の様子を見て疑いを濃くし、その苦境を嘲笑う者が多数の中、警視庁の忠実な番犬が飼い主の手を噛むわけはない、腐っても鯛、猫に小判だ、と会田(天知茂)だけはあくまで静観の構えを見せていた。 そんな折、橘の元へ“三上の娘を預かった、600万用意しろ”との電話が入った。同じ頃、三上の幼い娘・典子(細川美恵)の担任教師・辻京子(森秋子)から典子失踪の届けを受けていた会田たちも合流し、取引場所に現れた吉村(佐藤京一)らを逮捕、典子を無事保護した。しかし、事件当初のタレこみ電話が女性からだという事実が気になる会田は橘の過去を調べ、かつて公安にいた彼と関係のあったある女性を割り出した。 その人物とは、典子の担任の京子だった。彼女を訪ねた会田は、三上殺害の現場に落ちていた妙な葉っぱ(=あすなろの葉)が小学校に生えているのを認めた。学生時代の話が聞きたい、そう持ちかけた会田に観念したように過去を語り始める京子。学生運動の女闘士だった10年前に橘と出会って愛したのも束の間、実は彼は同志を逮捕するための公安サイドのアンダーカバーであることが発覚、仲間からはリンチを受け、橘には妊娠を告げられぬまま去られてしまった恨みから、事件は始まっていた。京子は死んだ三上の娘で、典子は彼女自身が産んだ、橘の子供だったのである。 橘への復讐のためだけに生きてきたという京子、そして娘の為に命を賭して偽証した三上。開き直る彼女に会田は、典子や教え子たちの為にも、いい加減許してやったらどうかと諭す。「あんた、子供たちが怖くなるときはないかね。俺はあの穢れを知らない澄んだ眼に立ち竦むことがあるよ。あんたも子供たちをこれ以上、裏切ることはやめるんだな……」その言葉に折れた京子は、当日に三上から預かった600万が入ったロッカーの鍵を会田に託した。 俺が頼まれたのは金を取り戻すことだけで、犯人逮捕は頼まれていない、と京子をそのままにした会田。後日、本庁で大きな紙包みを抱えた橘とすれ違った際、京子逮捕の知らせを聞く。「それから、子供は俺が引き取った」きっぱりと口にした橘に「立派なことだ」と真面目に返した会田は、夕陽の特捜部屋で物想いに耽るのだった。 ――遠い昔を忘れて生きている奴、引きずって生きている奴、愛して憎んで消えていく奴。どっちにしても、不幸なことだ……。 (控え目なイントロで昭和ブルース初登場の1番。うまくまとめたと思ったらその後電話が鳴り、「了解!」と銃を手に取り部屋を出る会田でエンド) *橘さん受難の回。不利な状況に陥りながらも悪を憎む心は消えていない班長さん、「明かりの下で育った虫は、世の中に夜もあるってことを知らねえんだ」とか言いながら彼の潔白を内心信じて冷静に事件を追う会田の、無言での視線の応酬が渋い。 *橘さんの奥さんが登場するのはこの回のみ。妻役の谷口香さんは第2シリーズで3話ほど出演している( #38「男のうたは兇悪」、 #69「兇悪の妻の座」、 #102「自供」)。 *後に太郎さん(左とん平)と結婚するリサさん(小牧リサ)、記者として初登場。どうやら会田とはそこそこ長い付き合いらしく、マンションに酒提げて押しかけて来るような仲だった。 *「あすはひのきになろうって、努力してる木ですわ」あすなろの木の前で呟く京子先生に身も蓋もないセリフを返す会田:「無駄な努力だな」
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| TVドラマ(現代劇)::非情のライセンス1 | 11:51 PM | comments (x) | trackback (x) | |