2009,07,19, Sunday
『黒と赤の花びら』(1962年・S37)
(TCC試写室にて鑑賞) 悪質な船の保険金詐欺を捜査中に遭難、死亡したとされる同僚・西条(安井昌二)の死の謎を追う、海上保険調査員の田代雄二(かなりの痩身だが髪型はイケてる天知茂30歳)。五百円で何でもオーケーと請け負うOKの松(大友純)から、真相を知っているらしい男・百瀬の所在を聞き出すが、部屋に入ると男は死んでおり、不審な先客がいた。彼女・笹本アキ子(上月左知子)は西条のフィアンセ。西条の死が信じられないアキ子もまた百瀬を訪ねてきたのだが、そのときには死んでいたらしい。慌てて部屋を出る二人だが、西条の形見のシガレットケースを落としたアキ子のためにもう一度戻ると死体は忽然と消えていて、なんと翌日、離れた場所で轢死体となって発見された。 OKの松が次に教えてくれたのは、百瀬に貸しがあったというスタジオ経営者の花田(丹波哲郎)なる人物。のらりくらりとはぐらかす花田、そして花田のスタジオにいたモデル(扇町京子)が接近してきたものの、ヤク中の彼女は何か話す前に田代の目の前で殺されてしまった。そんな折、田代はとあるクラブ(その名も「宇宙人」)で、西条が乗船していた船の航海長、冒頭でいかにも悪い奴然とした行動に出ていた蛭間(細川俊夫)に遭遇する。面と向かって鋭く核心をついた田代は蛭間の手下たちに襲撃されるが、間一髪でかわした。 田代はアキ子と共に花田の事務所に忍び込み、彼の恐喝の事実を掴む。そこへ飛び込んでくる弾丸と、花田を心配する電話。どうやら花田は何者かに狙われているらしい。田代が恐喝された教授の代わりに取引場所(駐車場)に出向くと、花田ではなく「宇宙人」で怪しい踊りをくねくねと披露していたダンサー(その名も「ガガーリン」:三原葉子)が現れる。そこでタイミングよく運ばれてきた新聞には、花田らしき男の溺死体があがったと出ていた。驚く二人。実は花田の実の妹・まさみだったガガーリンは協力しそうな顔をしながらも田代をとある場所に連れ込み、ある会社の名前だけ告げると彼を監禁して逃亡する。 そのころ、当のその会社にはアキ子が潜入していた。不審な挙動にでた彼女は蛭間の手に落ち海上へ。その船の船長は死んだはずの西条だった。学歴詐称して調査員になったという負い目が高じ、ミイラ取りがミイラになってしまったという西条に愕然とするアキ子。さらに彼の傍にはガガーリン=まさみの姿が。アキ子を襲った蛭間ともみ合い彼を撃った西条。とそこへ、(展開上微妙にタイミングが遅かった気もしないでもないが)セーターの毛糸をほどき、腕時計を窓から垂らして子供に見つけてもらう、という少年探偵団レベルの脱出劇を披露した田代が颯爽と現れた。一緒に戻ろうと西条を説得する田代だが、蛭間の放った銃声で鳴り響くサイレンを聞いた西条はもはやこれまでと、ガガーリン=まさみの手をとって海の藻屑と消えた。 すべてが終わった埠頭にて。残されたアキ子は本当に形見となったシガレットケースを海に投げ入れると、ふっきるように歩き始めた。そんな彼女の肩にそっと手を当て、田代もまた埠頭(と映画)を後にする――。 *新東宝亡き後に作られた「大宝」配給作品。助監督だった山際永三さんのお話によれば、当時の上映館は全国で10あまりしかなかったとのことで、新聞の縮刷版でも1963年の10月と12月にTBSでTV放映されているのが確認できた以外は情報がなく、でもワイズ出版の天っちゃん本ではやたらとかっこいいスチールが多く収録されていてずっと気になっていた幻の映画をありがたく鑑賞させていただいた。出だしが笑っちゃうほど悠長で、こんな調子で真相なんて暴けるのかと心配したものの、田代と一緒に驚いたり反芻したりしているうちにいつのまにかクライマックス。でも正直、出番は多いけどいなくても(アキ子さんだけが真相を捜し求める話にしても)よかった役だよなあ、と思ったりもして。やっぱガガーリンは田代とくっついてくれないとつまらないなあ(そこか)。 *原題は「海の罠」だったものの、これじゃあ地味すぎるからってことで、当時はやってた歌「黒い花びら」(by水原弘。天っちゃんも好きだったらしい←「五十年の光芒」で読んだ気が)あたりから拝借したらしい。余計意味がわからなくなってる気がするが、妙な勢いだけは感じる。
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| 映画::新東宝 | 10:44 PM | comments (x) | trackback (x) | |