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『たそがれ酒場』
『たそがれ酒場』(1955年・S30)

戦争後に絵筆を折った画家、辛い事件をきっかけに落ちぶれた老ピアニスト、訳あり過去を隠して踊るストリッパー……大衆酒場で繰り広げられる、さまざまな人間模様を酒場のセットだけでじっくり見せてくれる佳作。さすが鐘の鳴っている頃の新東宝は良い作品が多い。

軍隊が懐かしい鬼塚(東野英治郎)が軟弱そうな大学ゼミ生とその先生らしきお気楽集団に文句を垂れる開始28〜9分ごろ、突如玄関から猛ダッシュで画面手前まで走ってくる青年(天知茂)の姿。「聞け万国の労働者〜♪」と外で労働組合のストか何かをやっているようだったから、その関係者かもしれないが、アリスの兎並みに焦りながら階下へひょいと飛び降りた青年。その後ろから追いかけてくる背広のおっさん。「……分からん!」我々の気持ちを代弁するかのように鬼塚が呟いて出番はおしまい。

クレジット表記はあるが(その他大勢組だが真ん中キープでちょっといい位置)台詞は一切ない超高速出番。しかし意味が分からないなりにもハッと気になる存在感を醸し出していてお得でもある。

一瞬だけ皆の注目を集める猛ダッシュ労働青年(黒ハットが東野さん)

*6年後のTV版では、丹波さんが演じたチンピラ兄貴・森本役をゲットした模様。恋敵に左手をフォークで刺される森本、こっちも6年間で培ったワル演技で目だってそうだ。

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| 映画::新東宝 | 10:43 PM | comments (x) | trackback (x) |
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