光と影を描き出すバイオレンスに脱帽!『バイオレンス特急』(中島徳博著)第4巻:1980(S55):49歳
光と影を描き出すバイオレンスに脱帽!
俳優 天知茂
漫画はほとんど読まないんですが、刑事ものや探偵ものは別で、暇をみつけては読んでいます。やはり、ぼくの演じる役柄が、刑事とか探偵とか、なにか犯罪のにおいのする、そんな役が多いせいでしょうか。ちょっといきづまった時なんか、そういう漫画を読んで気晴らしすると、のってきたりするからふしぎですねえ。
中島先生の『バイオレンス特急』は、警視庁の特捜0課のはみ出し刑事(デカ)が主人公ですが、ブラウン管に三度目の登場である『非情のライセンス』も警視庁特捜部のはぐれ刑事(デカ)たちにスポットをあてていて、共通点が多いですね。菊千代なんか同僚役を演じる左とん平さんのふんいきに似ているようで、苦笑してしまいましたよ。
事件が発生して解決するまでのプロットを追うという、カッコイイ刑事漫画が多いなかで、この『バイオレンス特急』は、刑事の内面的な部分をも描写している点が、好感を持たれますね。自称ドンファンの菊千代がズッコケたりなんかすると、楽しくなってしまう。人間くさいっていうのかなあ。大事件の犯人を追求するストーリーの中に、拓摩と菊千代のコミカルな会話をみつけたりすると、ふたりがものすごく身近な人間に思えてくる。犯人に対する厳しさと暖かさがほどよくブレンドされていて、読者に恐怖感や不快感を与えていない。さすが、中島先生!って感じです。
ますます複雑になっていく人間関係、それに比例して多発する難解な事件、人間社会の光と影のコントラスト、それをうまく描き出している『バイオレンス特急』に脱帽です。これからも、おもしろい漫画を! 期待してます。[終]
*白いシャツ&単色っぽいネクタイで、千鳥格子のジャケットを羽織って右手でタバコをもって正面を向いてる渋い会田刑事テイストのモノクロ写真つき。
*「非ライ」のことや自分のことをさりげなく語りながら、漫画の中身や作者を好意的にプッシュして読んでみたい気持ちにさせる、たいへん器用な文章だと思う。さすが、天知センセイ!って感じです(真似)
*ちなみに「菊千代」というのは「○○してチョーよ」とか「どぎゃんなっとるがやー」などと名古屋弁を使いまくる楽天家の刑事。
*私が買ったのはジャンプコミックスの初版(1980年発行)なので、他の版はどうなのかは不明です
(2006年11月10日)