女殺し週刊実話 : 1964(S39)5月4日号:33歳
女殺し
茶の間の人気男 天知茂
天知茂。茶の間のテレビが生んだスターである。それもチャンネルの主導権をがっちりと握っている世の奥さま族に男としての不思議なムードを感じさせる、女殺しのスターなのだ。現代というメカニズムの中に、非情でニヒルで金と行動力を持つという役柄が「ブラウン管に彼が登場すると身体ぜんたいがふるえ、しびれるような快感を感じちゃう」という奥さま族の評となって表れてくるのだ。だから逆に夫族のあいだでは「コキュの代表」と人気が薄い。「亭主が一生懸命働いているのに、いくらテレビの画面の上とはいえ他の男に気を許しているなんてけしからん」というのが夫族の酷評。「ぼくが女殺しなんてとんでもない。一生懸命やっているだけですよ」とニガ笑いする天知茂だが、十年間下積み生活をつづけた末、NET“孤独の賭け”で小川真由美と組んで一躍トップ・スターにのし上った。その勢いを駈って目下“廃墟の唇”の主役と取り組み、大映の「宿無し犬」にも出演するというテレビから再び映画にカムバックした数少ないファイトの持ち主だ。
【写真キャプション】
・カメラの前で真剣な表情で演技する天知茂。(真剣というよりちょっと困ったような俯き加減の天っちゃん)
・次郎長三国志(フジTV)でちょんまげ姿の鬼吉に扮し大奮闘 (小粒でイナセな鬼吉のようだ)
・タバコをくわえ、目をいくぶん細めにした時の顔はたまらない魅力があると世の女性方はいう。これが不思議なムードを感じさせる秘訣なのであろうか……。(まさにそのまんまのポーズ)
・忙しい仕事の合い間をさいて一息つくときも仕事のことが頭から離れない。「本当に因果な商売だよ」とこぼしていた。(ヨットの浮かぶ海辺で佇むコート姿の天っちゃん)
*モノクロ3ページのトップ・グラビア。原文はすべて「天地茂」になっているところだけがトホホだが、「一生懸命やっているだけ」で色気と人気がぐんぐん上昇している様が垣間見られた
*TVでは女殺しと呼ばれていた頃に、映画では例の「しょぼくれ刑事」だったのか思うと、いまさらのように芸域の広さに感心する(だから「ボクの方が君より色気があると思うんやけどなあ」と鴨井=田宮にうそぶいていたのか、しょぼくれ!)
(2006年7月7日)