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シャネル・ルック登場週刊平凡パンチ : 1965(S40)4月12日号:32歳
シャネル・ルック登場

近ごろ、ご婦人はもとより、野郎のあいだにもめっぽう人気のあるTV番組が茶の間の話題になっている。毎週月曜日夜KTVをキー・ステーションとしている《ミスター・シャネル》がそれ。
スリルと色気とギャグ。その上、メンズファッションまでそろっているところが野郎にモテる理由。
ひところ、流行の発祥地がスクリーンであったのはご存知の通り。例のボンド氏のパンチに世界中のヤングマンがクラクラし、黄色いロールス・ロイスにカー・マニヤが垂涎をこらえている。
ところが、ブラウン管の方でもミスター・シャネルほか、続々とベスト・ドレッサーが現れ、TVファンにはうれしい限り。
このアクションの主人公、ミスター・シャネルこと、天知茂のスタイルにご注目あれ。T(とき)・O(ばあい)・P(ところ)に応じていろいろご披露に及ぶが、シャネルお気に入りのスーツはシェープ・ド・ルック調のダークなもの。ラベルはやや広め、ウェストを絞り込み全体をひきしめている。肩はスクエアー・ショルダーで男性的な感じを強調。サイド・ベンツの内側にはS&Wのホルスターがおさまっている。
スラックスのスソはやや広くシングル。渋いベスト(チョッキ)も魅力的。もちろんこれは防弾チョッキ。そのVゾーンにふさわしくボタン・ダウンに「フォー・イン・ハンド」で結んだタイが、またグッとイカしている。

内緒話に御用心
小道具の扱いがシャレているのもこの番組の特長。
とくにミスター・シャネルが犯人追跡や裏付け捜査につかう小道具は、イアン・フレミング氏も思いつかないような、奇抜なアイディアがとびだす。
しかし、このアイディアが新しい犯罪に結びつけられては困るので、素人には真似のできないような高価なものを使ってあるとか…。たとえば、音の望遠レンズとも云うべき超指向性マイク、これは20米ほど離れたところのヒソヒソ話も明瞭にキャッチするもの。技術スタッフの入れ知恵かも知れませんがさすがテレビ局。しかしこんなのが登場してきたのではうかつに内緒話もできません。ご用心下さい。
また、最近ビデオ撮りされたストーリーのワンカットだが、ホシの見当をつけ、いよいよ証拠固めと言うとき、天知茂はしきりに腕時計を気にする。じつはこの腕時計には感度のするどい小型マイクが組み込まれていて、絹糸のように細いコードで、服の内側にかくされた、超小型テープレコーダー《ミニフォーン》に会話を録音する仕掛けになっている。これはもともとKTVが報道取材用にドイツから買い求めたもの。鍵田ディレクターのたっての希望で、この番組に寸借することになったそうだ。

シャネルの愛用はS&W
音についてもうひとつ…。シャネルのガンさばきは定評、スタジオの中でもヒマがあると早打ちのトレーニングに余念がない。シャネル愛用はS&W(スミス・アンド・ウエッソン)・チーフ・スペシャル。オフィシャル・タイプに特殊なサイレンサー(消音装置)がついている。S&Wのスナプノーズ(ししばな)にサイレンサーをつけたのでは、みっともないとのシャネルの意見がとり入れられている。
シャレがアンブレラがサーベルに早変わりしたり、シガレットに仕掛けがあったりいろいろ楽しいアイディアをスタッフ一同、知恵をしぼっている次第。ミスター・シャネルのメンズ・モードと洒落っ気たっぷりの小道具が、これからもブラウン管にジャンジャンとびだすことだろう。

《ミスター・シャネル》毎週月曜日/PM9:45-10:15/フジテレビ/東海テレビ/テレビ西日本/関西テレビ/提供・小西酒造

*シャネルのイカすメンズ・モードは、モノクロ・グラビアページにて紹介あり(下記)

“シャネル”LOOK
シネ・モードが話題になり、流行をつくることはこれまでに多々あった。しかし、その大半は女性のモードで占められていたものだ。ところが“007”の登場により、あのボンド氏のカッコよさがメンズ・モード界でももてはやされ出している。

ここに紹介するのは日本版007として、今ブラウン管の人気を集めている“ミスター・シャネル”(関西テレビ系放映中)のニュー・ルックの数々だ。
戸籍を消した特命捜査員ミスター・シャネルが社会悪に挑戦する姿を、ときにはリアルに、ときにはコミカルに描くものだが、同時にこれまでの映画、テレビになかったメンズ・モードを強力に押し出し、スマートに見せるのだから若い人の注目を集めるのは当然かもしれない。

写真1)ミスター・シャネルのトレード・マークともいえるスリーピース(三つ揃い)のスーツ。濃紺の地に白のペンシル・ストライプの入ったコンチネンタル・スタイルだが、ブラウン管での効果を考えて、ベストのボタンを6つにしたり上衣のボタン位置を高くするなどくふうをこらしている

写真2)(右)淡いグレー地に大きな格子の入ったスポーティーな感じのするスーツ。ミスター・シャネル君大暴れの場面には必ずこのスーツであらわれるが、それもそのはず、背中にアクション・プリーツをとって活動的に出来ている。(左上)前合わせを深くとりラベルとポケットに茶色の皮を使いアクセントにしたライトグレーのスーツ。(左下)やわらかな感じのするツイーディなジャケット。

写真3)上衣丈を長くとりサイドベンツをうんと深く切った、黒のダブルブレストのブレザー。ラベルも巾広だ。

モデル=天知茂、カメラ=渡辺明、杉浦薫、衣装デザイン=森口宏一、協力=関西テレビ

*和製ボンドな「ミスター・シャネル」の概要。えらくこじゃれた小道具が飛び出していたようである。

(2009年10月29日)
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