回 | 放送年月日 | あらすじ(朝日・読売新聞引用) | あらすじ(週刊TVガイド引用) | 注 |
1 | 1964.4.2 | ある男のナゾの死を追う若い実業家の執念を軸に、現代社会の裏面にひそむ、複雑な人間関係を浮彫りにする。 *脚本:今村文人、監督:伊賀山正光、配役:泉田敬(天知茂)、大谷典子(上月佐知子)、服部(高城丈二)、高橋久子(野川由美子)、松崎節子(緑魔子)、吉原夏子(宮城千賀子) |
【製薬会社の青年社長に天知茂】“孤独の賭け”につぐこの1時間番組は、黒岩重吾の作品で、かつて週刊読売に連載されたもの。ある男の自殺のナゾを追う、若き実業家の執念を軸に、複雑な現代社会の裏面にひそむ醜い人間関係を浮き彫りに描く。主役の天知は「僕はこういう現代的な背景をもった役柄が好きですが、まだ悪役のイメージがまつわりついているようで気がかりです。この作品では完全にそれをぶちこわしてみたい」と、黒岩作品の重厚な味を演技の上で十分だしてみせると張り切っている。また、伊賀山監督は「物語を事件中心に追わず、底の浅い作品にならないように登場人物のすべての性格を突っ込んで描いていきたい」と意欲を語っている。/泉田敬は、大阪郊外の新開地にちっぽけな工場をもつ泉製薬会社の青年社長。その泉田も、5年前まではやくざだった。それがひょんなことから松崎という男に見込まれ、丸木製薬の下請け会社を任された。その丸木製薬に新社長として、北浜の買い占め魔といわれる角沼が乗り込んだが、営業部長である松崎の地位は動かなかった。だが、ある夜、松崎はナゾの失踪をし、数日後三田市郊外の山中で死体となって発見された。 | |
2 | 1964.4.9 | 恩人松崎の死因に不審をいだいた泉田は、大谷典子記者の協力を得て、まず丸木製薬新社長角沼の身辺を洗う。 *配役:井頭(石井伊吉)、角沼(高橋正夫) |
【松崎部長の死は自殺か】北浜の買い占め魔といわれる角沼が、丸木製薬に新社長として乗り込んできた直後、有馬に出張中の営業部長松崎は、ナゾの死をとげていた。松崎は、泉田をやくざの世界から救ってくれた恩人だった。泉田は恩人の死に疑惑を感じ、真相をつきとめようと決意した。会社の事は服部と井頭に任せ、業界紙の記者大谷典子の協力を得て、この探索に没頭することにした。そして、典子から意外な事を知らされた。それは松崎の葬式の夜、料亭で密談する角沼社長と津田総務部長の断片的な情報だった。一方、泉田が丸木製薬に対抗する大会社、吉原製薬の美人社長と過ごした一夜の情事は、彼の心に精神的な負い目をつくってしまった。 | |
3 | 1964.4.16 | スリリングな車の尾行や婦人記者との熱っぽい情愛などをおりこみながら、ナゾの核心に迫る泉田の苦闘ぶりを描く。 *監督:鈴木敏郎、配役:高田権衛門(瀬川道三郎)、三田署刑事(村岡正雄) |
【泉田をねらう黒い影】泉田は、新聞記者の大谷典子と有馬温泉に向かう車中で、外車に尾行されていることに気づく。泉田の車を追い越した外車は、林の中に突入し、やっと停まった。が、すでに車中には人影もなく、ナンバープレートは外されていた。再び車中で、典子は泉田に松崎の死因調べから手を引いてくれるよう頼むが、泉田にはそんな気がない。有馬の温泉で、旅館に入ろうとした典子はドテラ姿の丸木製薬津田総務部長ともう一人の肥った男に会った。 | |
4 | 1964.4.23 | 有馬温泉に乗り込んだ泉田は、恩人松崎の自殺当夜の行動に不審な点が少なくないことを知る。 *監督:鈴木敏郎、配役:松崎(神田隆)、島村(伊豆肇) |
【あの山が知ってる秘密】丸木製薬の営業部長松崎が自殺した。わたし(泉田)はその死に疑問を感じ、真相を調べようと、業界新聞の記者、大谷典子の協力を得て、松崎の死んだ有馬から三田へ向かった…。松崎の最後に泊まった旅館には丸木製薬の津田の姿が認められた。わたしは、松崎が止まっていたN旅館の女中梅代から当時の様子を聞く。N旅館の女中の話と、タクシーの運転手の話から、松崎のタクシーの後を走っていた自家用車の中に、相手の人物が乗っていたらしい。色白の女だというが…。一方、丸木製薬の持山にいっさいのナゾが秘められているらしい。とにかく、あの山の秘密を調べること…。あの山で一体なにが行われようとしているのか、それが分かれば、松崎の死の真相に一歩近づくことになるのだが…。 | |
5 | 1964.4.30 | 泉田へのいやらがせは、いよいよ激しくなるが、彼は屈せず、ナゾの女久子の行動を追及する。 *監督:鈴木敏郎、配役:久子(野川由美子)、草川秋子(沢たまき)、松崎幾子(加藤治子) 【ナゾメキぶりが板につく】殺人事件のカギをにぎるナゾの美女草川秋子の役で出演していますが、事件を追う泉田(天知茂)をあの手この手で誘惑、殺そうとするたいへんな悪女なんです。これまでセリフは一言もなく、表情だけが唯一の演技でしたが、こんどの撮影のときも監督さんたら“ハイ、そこでナゾめいた表情をつくって”なんて注文するほどなんです。おかげで私のナゾメキ専科ぶりもすっかり板についてしまったようですワ。(沢たまき) |
【松崎と久子の謎のネガフィルム】たえず泉田の背後につきまとっていた黒い手袋のナゾの男は、服部の全快祝いの夜、泉田のアパートに、リボンのかかった小箱を届けた。その箱の中には一輪のバラの花と、泉田らの行動を警告する、無気味な脅迫のカードが入っていた。しかも自然発火する装置がしかけられており、泉田は、危ういところで難を逃れた。一方その夜、井頭は、トルコ風呂で、高橋久子の姿を見た。彼女は松崎の亡くなった翌日、泉田の会社から姿を消していたのだった。泉田は、その翌日早速トルコ風呂を訪ねたが、何者かにそこから連れ去られようとする久子の姿を目撃した。そして残された彼女の持ち物から、彼女と松崎が一緒に写っている写真の一枚のネガフィルムを発見した…。 | |
6 | 1964.5.7 | 【抹殺された男のナゾ】恩恵を受けた松崎部長の死の真相を追及する泉田の背後を、見えざる敵がさまざまの手段でねらっていた。謎の一人、高橋久子を尾行した彼は久子のアパートをつきとめ、恐怖におびえる久子の口から、松崎が久子のパトロンだったことや、泉田の行動をスパイするよう命じたという事実を知った。久子のアパートを出た泉田は、何者かに尾行されていることに気づき待ち伏せて格闘する。そのとき、闇の中を疾走してきた一台の車は、相手の男を跳ね飛ばして去って行った。男は、事故を装って抹殺されたのだった。翌日、泉田は死んだ男が神戸の興信所員で近江という名であることを警察でききこみ、さっそく神戸へとんだ。 | ||
7 | 1964.5.14 | 神戸スラム街などで松崎の死因を追いながら会社の苦境打開に奔走する泉田の活躍ぶりを。 *監督:鈴木敏郎、配役:今村(大原譲二)、律子(星美智子) |
【再会したむかしの情婦】高橋久子の消息を訪ねて、神戸へやってきた泉田は、スラム街まで足をのばすが、そこにも敵の手が伸びていて大勢の男たちに襲われた。ちょうどそのころ、売春婦の手入れがあり、数人の女が検挙されたことを聞いた泉田は、そこで久子の消息がつかめるかも知れぬと、あわい期待をいだいて警察を訪ねた。しかし泉田はそこで、かつての彼の情婦律子の悲惨な姿を見た。見るからに律子は麻薬中毒者だった。それは泉田に裏切られた女の哀れな姿だった。 | |
8 | 1964.5.21 | 泉田は、吉原製薬の夏子に接近し、自社の将来を固める一方、典子に角沼の前歴を洗わせる。 | 【中原美紗緒がゲスト出演】今回から2回にわたって、泉田の調査に協力する商業デザイナーとして中原がゲスト出演する。――吉原製薬の女社長、吉原夏子に誘われるまま、泉田は彼女と琵琶湖畔で一夜を過ごした。その結果、夏子にまつわりつく今村というダニのような男に手をひかせるかわりに、吉原製薬が彼の会社のピンチを助けることが約束された。さらに泉田は、夏子の口から丸木の売り出す新薬の話もきいた。ところが会社の窮地を救うため井頭が換金を目的に納品した現金問屋“中村”が破産してしまった。このため大阪に帰った泉田は、泉製薬の信用をまもるために…。 | |
9 | 1964.5.28 | 角沼の正体をさぐるためにクラブへ潜入した泉田は、そこで井上というナゾの人物に会う……。 | 【泉田にせまる黒いキリ】泉田は、丸木製薬の新社長角沼の正体をさぐるため、バー“花の泉”に潜入した。彼はそこで、角沼たちの背後に君臨するらしい井上という謎の男に会った。不思議なことに、能面のような美女草川秋子がそのバーの新しいマダムに収まっていた。しかも、秋子と怪人井上との間には何か関係があるらしかった。草川秋子は松崎部長が死ぬ前に、ぜひ会わせたい人があるといって泉田をバー“はな”へ同行したときチラリと姿を見せた女である。松崎、草川、井上と何か一連のつながりがあることは確実だった。彼らの背後の黒い霧が、いよいよ身辺を濃く包むのを泉田はひしひしと感じた。 | |
10 | 1964.6.4 | 久子をめぐる泉田と殺し屋の激しい争いや、泉田に秋子をとりもつ角沼の不可解な行動などを。 【苦労人の魅力】天知茂さんという俳優は不思議な人です。いつの間にか相手の女優を引き立てる才能があるのですね。「孤独の賭け」の小川真由美さんもそうでしたが、苦労人だけに、人を盛り立て、自分だけで芝居をするということがないのです。一見、サビのきいた顔をしていますが、仕事に慣れない人の面倒もよくみているようです。神経と体力をすりへらすテレビの仕事の中で、よく人さまのことまで気が回るもんだと感心しますね。(監督・伊賀山正光) |
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11 | 1964.6.11 | 泉田を誘惑してきたナゾの女秋子。その華麗なワナを逆に利用しようと、彼は一夜を共にする。 【マダムに誘惑された泉田】泉田は、ナゾの女、クラブ「花の泉」のマダム草川秋子に誘惑された。秋子は容易にシッポをださなかったが、かつて律子のいたバー「カンパーラ」に働いていたことだけは、わかった。そして大谷典子の報告によると、秋子は泉田と別れると、すぐその足で角沼や井上に会っていた。泉田は、律子を探し出し、秋子の素性を探ろうと考えた。 |
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12 | 1964.6.18 | 秋子は丸木製薬の大株主井上の情婦で、その井上は、警察につながりのある人物とわかった。 | 【秋子の素姓をさぐる】バーのマダム草川秋子に疑惑を抱いた泉田は、ミナミの暴力街で秋子の素姓をさぐりはじめた。泉田にはなぜか秋子と律子が同じ素性の女に見えてならないのだ。律子はかつて泉田が捨てた女で、いまでは売春婦になりさがっている。ふたたび律子と会った泉田は、彼女の口から、秋子が丸木製薬の大株主井上と、10年近くも関係をもっていること、また井上は、兵庫県の警察とつながりのあったことなどを聞き出した。一方、井上は、秋子の素姓が泉田に知れるのを恐れ、泉田の周囲を警戒しはじめた。 | |
13 | 1964.6.25 | 入院した泉田の様子をうかがう、怪しい看護婦は、意外にも行方不明の岡本の妻美子だった。 | 何者かに傷を負わされた泉田に代わって井頭は牛見山へ向かった。 | 台本 |
14 | 1964.7.2 | 松崎は、生前警察やCICに関係していたことがわかり、泉田は新しい疑惑にとらえられる。 | 台本 | |
15 | 1964.7.9 | 松崎の死の真相が、しだいにわかりかけたある日、泉田は秋子に誘われて、伊豆へ旅行する。 *監督:今村農夫也、配役:西塚五郎(宮口二郎) |
【伊豆旅行に出た秋子と泉田】社会派推理小説として注目を集めた黒岩重吾原作の「廃虚の唇」も15回を迎えいよいよ佳境に入った。主演の天知は「“孤独の賭け”の悪役から、このドラマでは正義感に燃えた実業家という急変ぶりで、最初はとまどいました。とにかく、ほとんど毎回のラブシーンには閉口しています」と語っている。/製薬会社の部長松崎の死の真相を追及する泉田は、いく度かの危険にさらされながら、しだいにその正体をつかんできた。丸木製薬を乗っ取った北浜の株屋角沼、それに彼をバックアップしている金融業者井上、この二人の男は終戦直後に警察官だった。そして、松崎の死はこの二人の男を、進駐軍かCICのいずれかに関連があるようであった。バー“花の泉”のマダム草川秋子は井上の情婦である。秋子は泉田に近づき、たえず何かをさぐろうとしていた。今回は、泉田が秋子に誘われそれが危険な罠と知りながら、伊豆旅行に同行するところがヤマ場。秋子は泉田の予想通り、彼を石廊崎へ呼び寄せ、断崖に置き去りにして消えてしまった。すでに暮れ始めた断崖の静寂の中で、泉田はしばらく呆然と立ち尽くした。 | |
16 | 1964.7.16 | 西塚の襲撃をやっと逃れた泉田に今度は取引停止の通告…敵はやっぱり井上と角沼だった。 | 【事件の核心に迫る泉田】井上の情婦秋子から石廊崎に置き去りにされた泉田は、殺し屋の西塚から襲撃をうけた。やっと難を逃れ、大阪に戻った泉田を待っていたのは、丸木製薬からの取引停止だった。これで松崎の死の背後に、井上や角沼がいることは確実だった。一方、泉田はもとCIC要員だった神郡という男に協力を依頼した。その神郡は、かつてCICの東京機関員で、大阪の薬屋に変身した男を知っていた。その松崎の写真を見た神郡は、異常な熱意で泉田への協力を申し出た…。 | |
17 | 1964.7.23 | 松崎も角沼も井上もCICに関係していたことがわかり、泉田は非常なショックを受ける……。 *監督:鈴木敏郎、配役:神郡(江見俊太郎)、神塚(中原美紗緒) |
【CICにつながる松崎の死】泉田は、元CICの日本人要員だった神郡という男に近づいた。彼は松崎の写真をひと目見ると、それが木内と名乗るCICの仲間だったことを証言した。泉田は神郡と連れだって梅田駅に降り立った。その二人を電車の中から、ずうっと尾行している一人の男があった。二人はバー“N”で落ち合う約束をし尾行の男の目をくらましたのだった。泉田がバー“N”を訪ねたとき、神郡はすでにグラスをかたむけていた。そこで泉田は、松崎が木内と変名し元CIC東京地区の要員で、革命党に潜入していたことを聞かされた。 | |
18 | 1964.7.30 | 角沼たちの黒幕が、政界の実力者犬塚を知って、泉田は、事件の根の深さにあらためて驚く。 *監督:鈴木敏郎、配役:犬塚雷太郎(深見泰三) |
【黒幕は政界一の大物】泉田と神郡に正体をつかまれた角沼たちは、露骨な敵意をみせて泉田らにせまってきた。一方、大谷典子の働きによって、角沼たちがひそかに大阪に呼んだナゾの男は、政界一の実力者犬塚雷太郎であることがわかった。泉田は、松崎の死の背後にある大きな黒幕に改めて驚くのだった。今回は、角沼、井上たちの黒幕である政界の大物、犬塚雷太郎が登場するが、この弁護士には深見泰三が扮している。「わたくしは比較的社長、重役などの役が多いのですが、今度のような大物は初めてです。大の弁護士嫌いの上、政治家とは縁がないので苦心しました」と語っている。 | |
19 | 1964.8.6 | 大ボス犬塚の登場でいよいよ闘志を燃やす泉田は、まず、身辺の整理を急いで、戦闘に備える。 | ||
20 | 1964.8.13 | 泉田は神戸へ急ぎ、久子を救い出そうとしたが、失敗。彼女は、水死体となって発見された。 | 死んだ松崎の女、高橋久子は泉田に多くのナゾを残して、神戸の波止場から水死体となって発見された…。 | |
21 | 1964.8.20 | 泉製薬は、四倉製薬に販路を得て生産を再開したが、そこへも角沼らの黒い手が伸びてきた。 | ||
22 | 1964.8.27 | 牛見山の井戸や久子殺しは、松崎の死とどう関係するのか…厚い壁に当たって、泉田はあせった。 | ||
23 | 1964.9.3 | *脚本:今村文人、監督:今村農夫也 | 泉田はやくざの幹部桜井に、仲間に消されるより警察の方が安全だと説き伏せ、とうとう自首させたのであった。 | 台本 |
24 | 1964.9.10 | 泉田は、角沼の信頼を失った津田総務部長を使って、社内から角沼社長追放の運動を起こした。 | 台本 | |
25 | 1964.9.17 | 終戦直後の某国スパイ殺し事件に、父親も関係者だったと知り、泉田は驚く。事件は終幕に……。 *配役:井上(植村謙二郎) |
井上の情婦、草川秋子のアジトを訪ねた泉田に、秋子は銃口を向けたのだった。 | 台本 |
26 | 1964.9.24 | 泉田と犬塚の再度の対決で、松崎殺害事件の全ぼうが明らかになり、事件は大団円を迎える。 | 松崎の死にはじまる連続殺人の動機は、終戦時占領政策の秘密を記した一冊のメモ帳に関連があった…。 | 台本 |