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歌詞を覚えないのも愛敬ですよ週刊平凡 : 1979(S54)6月28日号:48歳
遠山一彦のここが聞きたい
天知茂
「歌詞を覚えないのも愛敬ですよ」

俳優がレコードを出すのは珍しくないが、天知の場合13年間に15枚というから、キャリアは長い。22日から《芸能生活30周年記念》として日劇で初めてのショーを開催。第2部で『夢追い酒』、『北国の春』など、最近のヒット曲をたっぷりとうたう。

「詞にはうるさいほうですね。オレは48歳の男。だから女にふられて涙を流す歌なんて持ってこられたらとてもじゃないけどうたう気がしない。中年男だったら、その場合、じいっと耐える……だって涙を流すほど純じゃないでしょう」

のっけから歌についての持論を展開。30周年記念として発売した『うしろ姿』では彼自身が詞を書いている。

「曲をつけてくれた遠藤実さんといろいろ話をしてたら、“最近の詞は長すぎる”というんです。まったく同感。そんなこともあって2行半のものを作ってみたんです」

さすがに自分で「いい詞です」とはいわなかったが、かなり満足しているようす。ついでにニューミュージック系シンガーの詞についての“批評”を――。

「あの音楽というのは一見新しいようだけど、じつは歌詞なんてかなりムリしているんじゃないかな。日本語の持っている聞かせやすい言葉を無視していることが多い。わざとかどうか、字余りの文句を使ったりしてね」

詞には確かにウルサイ男だが、いざうたうとなると、あまり歌詞が頭の中に入ってないらしい。

「いや、歌詞の書いてある紙を持って堂々とうたうのは、こりゃ愛敬ですよ。
ゼッタイにカンニングじゃないですよ。カンニングとは盗み見をすることでしょ。オレのは人前で堂々だから。もっとも、2〜3日うたうことがつづくと覚えますけどね」

詞は紙を持ってでもOKだが、メロディーに乗せてうたうという“作業”はどうやって覚えるのだろうか。そのセンセイはどうやら娘さんらしい。

「娘がハモンドオルガンをやっているんで譜面を弾いてもらって覚えるんです。自分の音楽と父親の音楽とは頭から違うとでも思っているんでしょう。うまいともへたともいいませんね」

何も批評してくれないのがかえって不満らしいような表情を見せた。

「歌というのは表現過多でもよくないんでしょうね。役者というのはとかく入り込みすぎてしまうけど、聞き手側に想像させる部分こそが歌であるんですよ」

「歌というのは“間(ま)”がだいじなんですね。だから間奏のときに照明を暗くされるのは大キライ。ドラマは台本どおりにやらなくちゃいけないけど、歌では間奏のときに“人間・天知”が出るんですから」

テレビ映画で顔が売れているので、キャバレー、クラブからの出演依頼はけっこう多いらしい。

「役者の仕事に比べ時間からいったらあの収入はいいですね」

*(会田スーツで)煙草片手にベランダらしき壁にもたれている写真つき。

*詞には確かにうるさそうだが、歌い方は年とともにアバウトになっているような気が(失礼)

(2007年2月22日:資料提供・naveraさま)
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