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男性専科テキスト’64冬のモード週刊平凡 : 1963(S38)11.28(NO.238):32歳
男性専科テキスト '64冬のモード/スターのおしゃれシリーズ 4

コンチネンタル・スタイルをとりいれた
キザをチャーム・ポイントにした
天知茂 待田京介のシルエット

キザなおしゃれが流行
「フジテレビの『紳士淑女協定』って見てる?」
「天知茂、谷幹一、田中邦衛なんかが、すごいキザなカッコしてるんでしょう」
「そう、だけど、キザなカッコが板についてるっていうのかしら、イイ線いってるのは天知茂だけネ」
「キザも、あそこまでいくと、すごくしゃれててステキ」

と、これは三人の女子高生の会話。
昔の「キザね」ということばには、なんとなくさげすみの意味があったが、いまはべつ。若い人たちの間で“キザ”ということは、“カッコいい”と同じ意味をもっている。

「赤いセーターを着てるからキザなんてのはもう古いのよ。スカッと三ツ揃いの背広を着て、キザ〜な感じってのがあるでしょう」
「一分のすきもないキザさと、ラフで無造作なスタイルのキザとがあるけど、けっきょく、キザふうってのは、センスがあっておしゃれでなければできないのよ」
キザでなければ、おしゃれでない、とまでいうハイティーンも中にはいる。

ところで、キザふうおしゃれの身についたスター、といえば、天知茂、待田京介、ミッキー・カーチス、鹿内タカシ、田宮二郎、高倉健、岡田真澄など。スポーツ選手にも、キザ風おしゃれで若い女の子の噂にのぼる人は多く、ボクシングなら海老原博幸、野球では巨人の柴田外野手、藤田投手、大洋の箱田内野手などが定評のあるところ。

● 衣装も自分でデザインする ●天知茂
「べつにキザふうなんて・・・」
と、天知茂さんは苦笑しているが、自分の身につけるものはスーツからカフスボタン、靴下の小物にいたるまで、全部自分でえらぶ、といっているから、そうとうなおしゃれぶり。
「天知さんのおしゃれは、ちょっとしたものですよ。映画でもテレビでも役がきまると、その役柄に合った衣装を自分でデザインするくらいですから」
と、天知茂さんの所属する中田プロダクションの石井三知夫さんはいっている。
天知茂さんのおしゃれは、スカッとしたスーツに真っ白なYシャツののぞく、紳士ふうなキザさと、一般にいわれているが、天知茂さん自身、
「ほんとは、ラフなスタイルが好きですね。ふだんは、ネクタイなんてしめないし、Yシャツだってあんまり着ませんよ」
と、写真(※)のようなジャケットスタイルでスタジオ入りしている。

※【写真キャプション】アイボリーのジャケットに黒のスポーツシャツ。水玉のアスコットタイがいかにもキザが板についている感じ
(*顔が「素」(つまり眉毛がハの字)で撮られてる天っちゃん。『紳士淑女協定』での服装みたいだが)

ラフ・スタイルが好き、といっても凝り性は凝り性。Yシャツでもカフスボタン、タイタック(タイピンの一種でつきさすようになったもの)まで、自分でデザインして注文するという。
もっか好きな色はチャコールグレーとか――。
「一つのことを思いつめるタイプなので、一度好きになると、そればかりになってしまうんですよ。一時はグリーンに凝ったし、黄色が好きだったこともありますが、いまはチャコールグレー一点ばり」
写真のスーツ(※)は、うすいチャコール・グレー。衿の形、衿から裾にかけてのすかっとした丸味のないカット、Yシャツのカフスを多めにみせるやや短めの袖丈、袖口の四ツボタン、スラックスの裾と、全体的におしゃれなムードをだすよう、一つ一つ計算されているのが特徴。

※【写真キャプション】もっかチャコールグレーに凝っている天知茂のフォーマル・スーツ姿。上着の前スソはカットにご注意
(*煙草片手にすらっと立ってる天っちゃん。「土曜日の虎」などで着ていたスーツか?)

中田プロダクションの社長、中田昌秀さんは、
「彼はおしゃれに対しては、ものすごく神経の細かい男ですよ。わりに帽子に凝ってね」といっている。

(*以下、鹿内タカシ、ミッキー・カーチス、待田京介さんの項は省略)

● 現代は服にからだを合わせる時代 ●
ところで、『JUN』の池田敏矩さんに若い男性のおしゃれをきくと、
「若い人たちの間で、スリーピース(三つ揃いの背広)がだんぜん流行ですね。ただクラシック調とか昔の良さをみとめるっていうのではなく、昔のものにグッと近代性をもたせてあります」
といい、型は、ひところのアイビーに代わって欧州調のコンチネンタルがうけてきたという。
ちなみに、コンチネンタル・スタイル、というのは、ストンとしたアイビーにくらべてなだらかなからだのまる味など、起伏をだしたもので、肩はなだらかに、パットなどで無理に厚味を出さず、衿幅は、いままでの極端に細いものにくらべれば、やや太め、上衣丈も短くなり、大人のおしゃれ、というかハイ・シックなものになっている。
「天知さん、待田さんの上衣をみると、それぞれ、凝ったカットをしてありますけど、流行をうまくとりいれて、衿やシルエットは、コンチネンタルですね」
というのは、佐々木忠さんで、衿こしのない鎌衿なら、みせまい、と思っても、Yシャツの衿が四〜五センチは見えて、それがイカス感じになっている。
最近は、欧州でもほとんど既製服だそうで、自分のからだを服に合わせるくらいでなくてはダメとか――。つまり、服に厚い芯やパットを入れるのではなく、ヒップ・パット、ショルダー・パットを使って、まず、自分のプロポーションを整えてからスーツを着れば、どんな流行の服でもドンピシャリ。
「同じキザでも、わかったうえでのキザってのはいいものですよ。おしゃれっていわれる人は、みんな凝り性ですから、なにか一つでも結構。てってい的に凝ってみることですね」
と、佐々木さんはアドバイスする。

(*以下「キザスタイルの小道具」という項は直接関係していないので略)

*『紳士淑女協定』どれほどキザなのか見てみたい
*60年代の凝ったスタイルは確かにカッコいいと思うが、70年代〜80年代になるとなにやら凝り過ぎた感がなきにしもあらずだ(特に会田刑事?←見てないけど)


(2006年9月17日)
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